「海を知る」「地球を知る」ブログ

海と地球の科学技術コンサルタント

2024.06.11

海洋ロボットを活用した地域社会の課題解決のための取り組み(その1)

 当社は、国土交通省が実施した「令和3年度海の次世代モビリティの利活用に関する実証事業」に採択され、東京海洋大学、長井町漁業協同組合、横須賀市とチームを組み、横須賀市相模湾側の長井地先に近年見られる磯焼けの対策として実施しているウニの駆除について、「小型ASVを用いたウニ密度マップによる効率的な駆除方法の検討」に取り組みました。この実証事業における活動が、当社の技術を地域社会の課題解決のために活かすパイロットケースとなりました。

令和3年度の実証事業で海底映像や地形データを取得する小型ASV

 本実証事業は令和3年度(2021年度)で終了したのですが、長井町漁業協同組合とは引き続き、同組合が取り組む藻場再生の活動に対して、当社が水中ドローンや水中用タイムラプスカメラでモニタリングし映像を提供するなど協力関係を築いてまいりました。

長井町漁業協同組合との長井漁港近辺の海底モニタリング
(水中ドローンで撮影した海底の様子)

 このような取り組みを継続すると共に、当社の新たな事業を立ち上げるため、令和4年度(2022年度)から東京海洋大学田原研究室との共同研究により、新たな自律型無人ボートの開発を始めました。

東京海洋大学田原研究室との共同研究による自律型無人ボート開発の試験の様子

 令和5年度(2023年度)には、本事業をさらに推進させるために社内で選抜された技術者による「水産資源事業開発タスクフォース」を立ち上げ、以下の4つの柱を中心に進めてきました。
①自律型無人ボートの開発
②ウニ密度マップ作成にかかわる開発、データ処理の確立
③水中ドローンによるウニ採取技術の開発
④ムラサキウニの陸上畜養方法の検討、実験

 ①~③では、磯焼けの原因の一つであるムラサキウニを効率的に探索し、採取する技術開発、④においては採取したムラサキウニに横須賀市域の畑の野菜を餌として与えて身を太らせ、水産物としての価値を高める手法の開発です。さらに次の段階の話となりますが、食用としたムラサキウニの殻については、横須賀市域の畑の肥料とする検討を進める考えです。

ムラサキウニの陸上畜養方法検討の開始

 取り組み全体としては、横須賀沿岸の磯焼け対策として、ウニを探索して採取し、畑の野菜でウニを畜養し、廃棄するウニ殻は畑に戻す。このような循環の社会実装を目指して、地域の水産業と農業関係者の協力のもと、当社の技術を活かした事業に取り組んでいます。

 今後、上記の内容と令和6年度(2024年度)以降の取り組みを含めて、シリーズとしてブログに掲載していきたいと考えております。